照明 が一つだけついた薄暗い会場に、水が絶えず滴り落ちる音が響くのを聞いてるうちに、もしかしたらこれは血液が流れる音なのではないか、と思う。 今季のコレクションで、女性の身体を通じて現代社会に蔓延する社会現象を具現化することを目指したセイヴソン。真実と虚偽の間に存在する矛盾、真実の歪曲が溢れている現代に挑んだという。 まず目を引いたのは、多層に布を重ね、傷跡の歪みをデザインしたコート。まるで傷を塞ぐ新たな皮膚と古い皮膚がつぎはぎでも、新たに生まれ変われることを表しているようだ。 皮膚の皺やたるみを想起させる穴や皮膚を切り裂かれたようなカットが施された薄手のニット、至る所から嘘をつけられ、いびつに膨らませられた真実を表すようなダウンジャケットのシルエットも登場。 解体と再構築を得意とするこのブランド。 情報が歪められた女性達が蔓延している現実を解体し、新たに組み合わせ、傷跡が残っていても再構築し、立ち直った身体は美しいものであるということを強く訴えかけられた。 Text Emma Tatsumi 絵舞 辰巳
カルチャーの中で人々が繋がって生まれる流行や動きを、輪や円といったものとして表し、一つの言葉にさまざまな意味があるサークルとしてのテーマが込められた、今回のコレクション。 ショーの中で、一際目を引いたのは、ボリューミーなシルエットだ。袖や背中をふっくらと盛り上げながら、胸丈は短くカットされ、スッキリとした印象も残る。 神秘的な生き物や禁断な果実のイラストもデザインのあちこちに散りばめられ、SNSを通じて大衆に浸透してきた偶像や信仰心と非現実で夢かわいい世界のマッチングが、私たちの生活の営みとカルチャーが密接になっている姿のように感じられた。 ジャパニーズアニメーションを彷彿とさせる絵が書かれたシアーのトップスや迷彩など多彩な柄と、蛍光色とシルバーカラーの組み合わせのルックが続くルック。それはまさにカルチャーが境界のなく回り続け、常に私たちとともに進化していくことを表していた。 Photographer Mari J Brooklyn Text Emma Tatsumi 絵舞 辰巳
秋葉原のキャンプ練習場というユニークな会場で行われたファッションショー。 レザーライダースジャケットとヒッピーデニムを高解像度でスキャニングした、トロンプ・ルイユに加え、ワイヤーで歪みやうねりを形にしたデニムの重ね着アイテムが、未熟者ならではの愛らしいエラーを覗かせ、柔らかいニットのデューラグはかなり新鮮なストリートを感じさせるアイテムだ。 背中や両肩に刺繍が施されたカジュアルなジャケットは、テーラードジャケットにあしらったアゲハ蝶は神谷家に伝わる家紋がモチーフで、先祖代々を背中で感じ「男たるものの責任」と鼓舞しながら社会で生きていく性(サガ)を込めたらしい。 最後にインパクト大のデコトラックで煌びやかなネオンに包まれたモデル達で、観客を魅了したコレクションだった。 Text Mari J Brooklyn Photographer Gentaro Sakurada 櫻田 言太郎
今回のコレクションの着想源は、小塚信哉デザイナーが20代前半で制作した絵本「いろをわすれたまち」。 主人公は、色の存在しない世界に住む絵描きで、ある日、色彩豊かな絵画の世界からやってきた男に出会う。 友を得た嬉しさから、周囲の景色が徐々に色付いていくが、突然男と音信不通になってしまう。 絶望を表すように世界から色が消える中、徐々に前を向く主人公は再び筆を取る。 そんな「絵の中の世界」を表現するかのように、カラフルな色彩を基盤にしつつも所々にモノトーンの配色を差し込み、主人公の心情を投影するかのような演出、Mr.Childrenの「1999年、夏、沖縄」をBGMにゲストを歓迎した。 シンヤコヅカが創り出す作品はとても魅力的で、とにかく想像力を掻き立てられるものばかりだ。 服を見た時に、それぞれが違うモノを想像するような情緒的な価値を提供する。 目に見えないものが伝わるような、そんな「光」のような存在だと思う。 Text Miku Kobayashi 小林 未来
原宿の会場で行われたコレクション。赤と白のインパクトのある風船のプレゼンテーションに血のようなプリントのトップスとショーズ。 スーツジャケットやシャツには、スナップやボタンを使った肩のラインやボトムのサイドにアクセント。 普段スーツを着ない人でもついつい手を伸ばしてしまいそうな絶妙な切り替えとがかっこいいセットアップだ。